2006年09月26日

財物でないが故に

『オンラインゲームのアイテム詐取、24歳男を逮捕』(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060925i216.htm

『詐欺:ネットゲームのポイントで詐取容疑 東京の無職男逮捕』(毎日新聞)
記事リンク


今回のこの事件でのポイントは下記となります。
・「判例」ではなく「逮捕例」
・「有料アイテム=ゲーム内でサービスを受ける権利」という判断で詐欺罪を適用
・再逮捕(もともと不正アクセス禁止法違反罪で起訴)
・ゲーム内で詐欺師をロールプレイすることの将来

これらについて簡単に考えてみたいと思います。

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まず事件について、簡単な流れは記事を見ていただいておわかりのとおり、もともと不正アクセス禁止法違反で逮捕されていた容疑者(参考:記事リンク)の再逮捕ということになります。不正アクセスの回数も尋常ではなく、この容疑者はネットゲーム犯罪の常習者ということができます。不正アクセスをして何をしていたかということについては、記事中に「ゲーム内に貯(た)めていたポイントの消費やキャラクターアイテムの譲渡」ということで、不正アクセス(クラッキング)自体を楽しむようなものではなく、明らかにゲーム内で何かを有利にしようという目的があって行われたものと判断できます。

では詐欺が問われたこの事件の焦点について書きますと、「判例」ではなく「逮捕例」という点で、注意深く結果(判例となる刑の確定)を見守る必要があるということがまず言えます。そもそも不正アクセスという点で裁かれるべき犯罪があったわけですから、再逮捕の理由としてこれが必要だったと見る向きもあるため、最終的にはどの刑が確定するのか、というところまで確認しないとわからないのです。

どうあれこの結果によっては、それ以降「ゲーム内でサービスを受ける権利」が課金アイテムに付帯して回ることも考えられます。課金アイテムあるいは、プレイヤーが対価を支払うことによって運営社から取得した権利を内包するゲーム内データに関わる受け渡し機能やその運用法について、ネットゲーム運営社は様々な点での改造(ゲームシステム含む)や改革(規約やプレイの制限等)を求められていくようになることは明白です。

少なくとも、下記の機能について、機能自体の変化あるいは「面白くない注意書き」の必要が出てきます。
・課金アイテムを購入する際、他のプレイヤーにプレゼントする機能
・課金アイテムをゲーム内で受け渡し(トレード)できる機能
・課金アイテムをフィールドにドロップ(捨てる)できる機能

例えば、課金アイテムが受け渡しできると仮定して、トレード機能使用時に「面白くない注意書き」をつける例を考えてみます。トレード機能使用時に「このアイテムは課金アイテムです。このアイテムを相手に渡す場合、このアイテムに関する全ての権利を放棄した上で渡すことを承諾する必要があります。」というようなメッセージを出し、[承諾する]ボタンでもつけた上で、承諾したことをログに残す、なんていうのはどうでしょう。

「プレイヤーAの権利にかかるアイテム」→権利放棄→「誰の権利もかかっていないアイテム」→トレード機能→「プレイヤーBが取得したアイテム」

すなわち、プレイヤーBが詐欺師だろうと何だろうと、一度権利を放棄し運営社によって放棄した事実が記録に残された「誰のものでもないアイテム」を取得したに過ぎない、と無理やり定義付けるやり方です。強引に言えば「手放した瞬間捨てたも同然なのだから何が起こってもつべこべ言うな」というもの。これは、アイテムやゲーム内通貨が「財物ではない」からできることなんですが、これではさすがに興が削がれますね。

そもそも「課金アイテムは交換できない」というほうが現在は主流なのであまり心配はなさそうですが、ブライトキングダムを初めとしてアイテム課金モデルのゲームにおいて、課金アイテムのゲーム内交換機能を求めるユーザーの声が高まっている傾向がありますので、ゲームによってはさっきのような「面白くない注意書き」を追加して対応していくこともあるかもしれません。


・課金アイテム購入者への意識付け

課金アイテム購入者は、こういった詐取事件に対する認識を深めていく必要があります。プレゼント機能については、自分の意志で贈るだけですが、相手と「あとでゲーム内通貨渡すから」というような約束をしている場合、その約束が反故にされたら、ということを常に考えておく必要があります。現象としては「AからBへプレゼントが贈られた」というものと、「BからAへゲーム内で通貨が渡された」というものはまったく繋がりがなく、単純に信用というもので結び付けられるものです。その点について、課金アイテムを遣り取りしようというときにはより一層の注意が必要になりますね……。


とまあ、適当に考えてみたのですが、こういうことになってくると、ロールプレイとして「詐欺師」をやっているというプレイヤーは、その楽しみが全然なくなってくるということになります。もちろん、素でプレイしている人も多いのですが、ゲームによってはポリシーを持ってロールプレイをしている人もいるため、段々ゲーム世界そのものが、ゲームの外の都合によって狭められていくというのは必然とはいえやるせないものだと思います。ロールプレイでなくても、冗談で騙すつもりが、実際の詐欺扱いになってしまったり、突然接続が切れたタイミングでログイン障害発生、という笑えない事態も起こらないとは限りませんし、なんともやりにくいですね。

古来、ゲームには必ずイカサマやインチキというのはつきものだったと思います。なにもゲームに限ったことじゃない。けれども、ことMMORPGは(RMTを考察するときにも散々使う言葉ですが)独特の「価値観」を内包しているため、あまりよくないトラブルも起こりやすいということです。

とりあえずは、この事件の結果を、待ってみたいと思います。
[ブラキン] [天道] posted by 塩肉(Sionic) at 12:09 | TrackBack(0) | 業界トピックス
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